「ぴよこ、おいしいねぇ」 地球から来た女は言った。 「うん、おいしい」 は最後の一口を収め、指に付いた分も勿体無いと言うようにぺろりと舐める。ジェットはその艶かしい仕草と、机の上に散乱した大量の菓子の包み紙との差にどうしても違和感を覚える。 「…よく食うな」 「ジェットさんも食べて食べて」 「あぁ」 に促され、地球土産を手に取る。可愛らしいひよこの形をしている饅頭だ。地球人も案外残酷だな、と思いながらもジェットはそれを丸ごと口に放り込む。以前にも食べた事があるが、今はどんな味なのかよくわからない。記憶の糸を手繰り寄せてもこんな味だったかどうか思い出せない。 ただ、目の前の女の事ばかり気にかかる。 「おいしい?」 無防備にこちらを見上げてくる地球産の女。その瞳に、思わず吸い込まれそうになる。の黒い瞳。まるでブラックホールだ。 「…わからん」 無愛想に言葉を返すと、何が楽しいのかはくすくすと笑った。その口を塞いでやりたくなる。けれどジェットにはそれができない。 嗚呼、全く。地球産にはろくなものが無い。 |