「ジェットはさぁ!」 「あぁ」 「ジェットはぁ…」 「あぁ」 「やさしいねぇ」 「別に、大したことはしてないだろう」 「そんな事はないでしょう!現にこうしてくれてる訳でぇ」 こうして。というのは、酔っ払って帰ってきてビバップ号のソファに倒れこんだに水を渡した状態の事である。 「お前だって酔って具合の悪くなった奴がいたら、水くらい渡すだろ?」 「いいや!私は酔ってなぁい!」 と怒鳴ってから、頭痛い…とはううんと唸った。こりゃ駄目だな、とジェットは閉口する。 しかし酔っ払いというのは、どうして酔っていないと言い張るのか。諸説あるだろうけれど、ジェットには未だにその正解がわからない。代わりに、こういう時にどう答えればいいのかだけは知っている。 「そうだな。お前は酔ってないな」 「そう、酔ってないのよ!」 肯定してやると、案の定は上機嫌で叫んだ。それからまた頭痛に唸る。だから何で怒鳴るんだとジェットは苦笑した。 「あー…じゃあ、仮にだ。仮に」 「仮に?」 「そう。仮に誰かが酔ってたとする」 「誰かって誰?どこの誰?女?男?人間?」 酔っ払いは面倒臭い。早口でまくし立てるを見て、ジェットは降参だという風に両手を上げた。 「わかったわかった。じゃあ、フェイだとする。そしたらお前、水くらい渡すだろ?」 「渡すねぇ」 「俺のやってる事は、そういう事だ」 「…そっかぁ」 「そうだ」 そう、別に何という事は無い。 馴染みの女が具合が悪くて介抱しているだけ。ただ、それだけ。酔っ払った頭とはいえ、真っ先に自分の所へ来てくれたのが嬉しかったなんて、そんな事は無い。無いのだ、とジェットは自分自身に言い聞かせる。 どうして言い聞かせているのかはジェット自身もわかっていない。わかりたくないだけかもしれないが、とにかく、ジェットの結論としては、これは何という事は無いのだ。 「でもねぇ、ジェット」 「あぁ」 「ジェットにとっては大したことない事でも、私はすごく………」 突然の沈黙。残念な事に、俯いているの表情は読めない。 「?」 「…きもちわるい」 「は?」 「やばいやばいやばい吐く吐く吐く吐く!」 「ちょ、待て!待て待てここで吐くなよ!?今袋持ってきて―――」 終幕。 |