だから私達は笑うのだ

「平助さんは、諦めてしまったの?」
「んー?」
「諦めてしまったの?」
「俺が、諦めたのかって?」
「えぇ、そう」
 ほんの一呼吸の間を置いてから、
「そんなことないよー」
 からりとした平助さんの声。それはとてものんびりとしたものだった。
 けれど、ほんの一呼吸の間の意味を私は知っている。ほんの一呼吸の間。見逃すはずない。
 気づいた瞬間には、私の頭の中は平助さんへの質問で埋め尽くされる。どうして諦めてしまったの?どうしてどうしてどうして―――。
 だけど、
「そっか」
 私は短い一言で平助さんへの疑問を飲み込む。
 なぜって。
 諦められてしまったことが悲しかったから。私に本当のことを言ってくれなかったことが悲しかったから。
 悲しくて、悲しくて、ただ、悲しくて。

 だから、私は諦めてしまった。

「ねぇ、平助さん」
 もしかしたら、平助さんも。
「何?
 平助さんの声は優しい。疑問には答えてくれない癖に。
「私達、似た者同士ね」
「…そうかもねぇ」
 お似合いじゃん、と平助さんは笑う。
 それはやっぱりどこか悲しげな笑顔だった。

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