セルバンテスさんは楽しい事が好きなのだと思う。
子供が好きだと言って、よく大作君やサニーちゃんと遊んでいた。その可愛がりようは見ていて呆れるくらいのものだったけれど、よくよく見ればセルバンテスさん自身も子供のようなのだ。私にはそれがおかしくて、愛しかった。 人を驚かせるのもお手のものだった。プレゼントに何が欲しいと聞かれ、特に思いつかなかったので無難に「花」と答えた事があった。「楽しみにしていたまえ!」とセルバンテスさんが楽しそうに宣言したその翌日。帰宅すると、家が花で埋もれていた。言葉通り。決して大きくはないが、それでも二階建ての一般住宅である。玄関に続く小道は見事な花道。ドアを開ければ花の雪崩が起きた。花で圧死すると思ったのは、この時が初めてだ。経済力に物を言わせたこの所業には、怒りや呆れを通り越して、最後には思わず笑ってしまった。(その後花は数本を手元に残して、後は全てセルバンテスさんに引き取らせた) セルバンテスさんの事を考えると、楽しい事ばかり思い出す。 だから、私はいつも期待してしまうのだ。予想のつかないようなサプライズを用意して、家の前で待っていてくれるんじゃないだろうか、と。そして彼はこう言うのだ。「受け取ってくれたまえ!」と。それはそれは楽しそうに。 セルバンテスさんは悲しい事は嫌いなのだと思う。 何でも楽しい事にしてしまう、魔法使いのような人だった。実際、私は今まで彼といて悲しみの涙を流した事なんて一度も無い。 そう、セルバンテスさんは私を悲しませたりなんかしない。 悲しませた事なんて、無かった。 だから、嗚呼、どうかそんな哀れみの目で私を見ないで! |