は今にも泣き出しそうだった。 隣にいるレッドは静かだったけれど、にはレッドが放つ殺気を肌で感じ取ることができたので、今の状況が辛くて仕方が無かった。 「あの…」 「何だ」 「大した事無いんですよ、本当に」 「…そうだな、大した事無いのかもしれんな」 だが、とレッドは言葉を続ける。レッドがじろりと睨んだその先には、の白い腕に走った一筋の太刀の跡。決して深くはない傷だったが、レッドが指先でゆっくりとなぞると血が滲んだ。 「許せんな」 苛立たしげに言葉を吐き捨てると、レッドはの傷口に唇を押し当てた。赤い舌がゆっくりと傷口を這う。痛みと、ほんの少しの甘い疼きにが小さく呻くと、レッドはゆっくりと舌を離して自身の唇を舐めた。 「なぁ、」 口元を歪めて、レッドはに笑いかけた。 「私以外の者が貴様に傷をつけるなど、許せると思うか?」 決して穏やかではない笑みを浮かべながら、その瞳は怒りに燃えていた。同時に、そこにはこれから始める殺戮への狂喜が潜んでいた。それは誰にも止めることができないものだとは知っていたので、どうか人がたくさん死にませんようにと無責任に祈ることくらいしかできなかった。 |