私、ヴィラルといられるのが嬉しいんだ。 笑ってそう言う娘に、どう答えていいのかわからなかった。 散々迷った末に、くだらない事を仏頂面で言った気がする。馬鹿なことを言うな、だとか、そんなような言葉だ。 その時の娘の寂しげな笑顔は、今でもよく覚えている。何だか無性に抱きしめてやりたくなるような笑顔だった。思わず手を伸ばしかけて、そして、止めた。 簡単な話だ。娘の白くて細い器用そうな手を掴むには、自分の手はあまりに大きくて凶暴すぎた。ただ、それだけの話。 その後のことはよく覚えていない。ただ、雨の中を一人で歩いたような気がする。 もしかしたら、あの娘が泣いていたのかもしれない。 |