注意 * 主人公が死ぬ話


























その理由

 愚かな娘だった。

 どうしてニンゲンを殺さなきゃいけないの?

 そんな馬鹿げた事を真顔で言う娘だった。
 いちいち理由がなければ貴様は何もできんのか、と返すと娘は納得がいかない風に口をぎゅっと結んで俯いていた。

 どうしてニンゲンを殺さなきゃいけないの。

 本当に愚かな娘だった。
 ガンメンにも乗らず単身で外へ出た結果、あっさり死んでしまった。
 駆け付けた時には既に事切れていた。美しかったその身体をぼろぼろに引き裂いたのは、先日殲滅し損ねたニンゲン達だった。娘が本気を出せば、そのうちの何人かは道連れに出来ただろうに。話せばわかりあえるかもしれないでしょう?娘のそんな言葉が頭をよぎった。

 どうしてニンゲンを殺さなきゃいけないの?

 簡単な話だ。殺さなければこちらが死ぬ。ただそれだけの理由。
 こんな簡単なことがどうしてわからなかったのか。

「お前は馬鹿だよ、

 時折こうして思い出す。その度にいつも思い知らされるのだ。自分はあの娘のことが嫌いではなかったのだと。

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