ヴィラルが少しばかり乱暴に唇を押し付けてきたので、はそれに反撃するかのようにヴィラルの口に自身の舌をねじ込んだ。そのままヴィラルの尖った牙のような歯にめり込ませるように押し付ける。と、の舌に傷がついたらしい。突然じわりと広がった鉄の味に、ヴィラルは顔をしかめての肩を掴むとそのまま自身から引き剥がした。 「お前、何がしたいんだ」 お互いの口と口を唾液の糸が繋いでいたが、ヴィラルが喋るとそれは切れてぱたりとの顎に垂れた。はそれを細い指で掬い取ると、赤い舌でゆっくりと舐めてみせた。その指を見つめたまま、は面倒臭そうに答える。 「印が欲しかっただけ」 「印?」 「そう、私がヴィラルのものになる印」 それくらい許してくれたっていいでしょう。そう言っては悪戯めいた、けれど少しだけ悲しそうな目をしてヴィラルに笑いかけた。 「、お前は…」 馬鹿な女だ、とヴィラルには続けられなかった。代わりにの細い首筋に、噛み付くようなキスをした。びくり、との身体が一瞬震える。首筋から、鎖骨、そして胸へと唇を寄せていくとの唇から甘い吐息が零れてきた。 「やっ…」 がか細く啼いて身をよじらせた。ヴィラルの指がの恥所に触れたのだ。その耳元でヴィラルが囁く。 「印が欲しいと言っただろう」 それが存外優しい響きを持っていたので、は目を見開いてヴィラルの顔を見た。獣を強く思わせる瞳にその時宿っていたのは、柔らかな光。その光に惹き込まれたようにが大きく頷くと、ヴィラルの指が静かに動いた。 「ヴィラル」 は生理的だか心理的だかわからない涙を流して、すき、と小さく呟いた。 |