「愛の為に死ぬなんて、くだらんな」 レッドは愛を語らう男女に向かって、嘲笑を投げかけた。それでも男女は構わず愛を語らい続ける。それもそのはず、それはテレビから流れてくるドラマだった。 「そうは思わんか?なぁ、」 「そうですねぇ…確かにそうかもしれません。貴方の為に死のうと思ったことなんて、一度も無いですし」 「何だ、冷たい女だな」 レッドは手で顔を覆って大げさに嘆いてみせた。先程くだらんと言ったのはどの口だったか。 「私が貴方の為に死んでも貴方は喜ばないでしょう?」 「無論だ!私が殺す前に死なれる程悲しいことは無い」 「論点ずれてる気がするんですけど…ていうか嫌ですよ、そんなの」 いつも歪んだ笑顔を浮かべてばかりのレッドが、珍しく真剣な表情でを見つめた。男にしては美しいとも言えるレッドの表情には思わずどきりとする。が、 「。嫌よ嫌よも好きのうち、という言葉を知っているか」 いくら格好良かろうと、この台詞には流石のも流されなかった。 「勘違いストーカー野朗みたいなこと言わないで下さいよ」 「何?それでは私が変態みたいではないか!」 「………」 「何故そこで黙る」 「まぁまぁ。人生はドラマみたいに上手くいかないってことですよ、きっと」 「上手い事まとめてみせました、みたいな笑顔をするな」 「そんな顔してたつもりはないんですけどねぇ」 食えぬ女だ。と思う反面、レッドはどうしてもこのという娘のことを憎みきれない。こうして行き場を失った苛立ちはテレビに向けられた。 「あ」 が気づいた時には、先程までテレビとして機能していた鉄の箱が、綺麗に二つに割れて煙を出していた。これでは買い換えるしかあるまい。が顔をしかめると、 「愛の為にテレビを壊すのは、愛の為に死ぬよりも崇高な行為だろう?」 とレッドは平然と言い放った。 |