「ジェットさんって恋人いるの?」 「恋人?」 「そう、恋人」 恋人。久しく自分とは遠ざかっていた存在。随分甘い響きだ、そう、恥ずかしいくらいに。 「今の俺にいると思うか?」 ため息混じりの言葉を聞いたにも関わらず、の大きな瞳はさらにジェットに迫った。 「もしかしたら、どこかの星で待っている人がいるかも」 「もしいるんだったらな、とっくに落ちついてるさ」 一瞬の間。それからが作り出した異様な緊張状態は解かれ、空気は再び穏やかに巡り始めた。 「じゃあ、いないんだ」 「いいだろうがそんな事は」 が妙に楽しそうなので、ジェットは不機嫌そうに顔をしかめた。 「ごめんなさい」 申し訳無さそうに笑うに、ジェットは質問を返した。 「そういうお前はどうなんだ」 大して意味は無い、何気ない質問。別に気になった訳ではない。聞かれたから聞き返した。それだけの話。ジェットは自身にそう言い聞かせる。 「私?」 「いてもおかしくない年齢だろ」 恋人の一人や二人。ジェットから見ても魅力的なという娘に想いを寄せる男は少なからずいるだろう。そこまで考えてみて、ジェットはその事実が何だか面白く無い。理由は考えない。考えたくもない 「いないけど…恋人にしたい人なら、いるよ」 「へぇ」 それは幸福な男だ、とジェットは思うが口には出さない。代わりにあまり興味が無い風に、適当な言葉を選ぶ。 「ま、頑張れよ」 「うん、頑張る」 返って来たの返事が思いのほか嬉しそうだったので、もう少しましな言葉をかけてやれば良かったとジェットは少しだけ後悔した。 |