「お前、私の事を怖がっているだろう」 その事実の何がおかしいのか、レッドはにやりと笑った。 「そんな事…」 思わずうつむいたが、レッドはの顎を掴んでくいと上げた。視線すら逃すつもりはないのだろう。異常な程の独占欲。はそこから今すぐ逃げ出したい衝動に駆られたが、身体は石になってしまったかのように動かなかった。 「別に怒っている訳じゃない。嘘などつくな」 レッドの口調は恐ろしい程甘く柔らかなものだったが、にとってはそれすら恐ろしくて仕方が無かった。 「あの、私…」 自分の意識とは裏腹に、声は震え、瞳はゆらゆらと揺れる。 と、突然レッドが手を離し高々と笑い声をあげた。 「!!!!」 楽しそうにレッドはその名を呼ぶ。呼ばれたは訳もわからず立ち尽くすことしかできない。不安を押し隠すように自身の服をぎゅっと掴むと、その手をレッドの冷たい手が包み込んだ。 「私はな、お前のその姿を心底美しいと思っているのさ」 「え…?」 「私は美しいものが嫌いではない、いや、むしろ好きだな。愛しているといってもいい」 どうしてこの人はこんなにも愛しげな瞳で私を見つめてくるのだろう。不快な訳ではない(はこの美しい狂った男のことを何故か愛していた)。けれど恐ろしいのだ。自分のことを美しいなどと思ったことのないは、その視線に過剰な程怯えた。そしてレッドはそんなをむしろ美しいと思った。 嗚呼、だからこそ。 「愛しているぞ、!」 レッドがそう叫んでの身体を強く抱きしめると、娘の大きな瞳から涙が零れ落ちた。 |