【殺し文句】 ころし-もんく 男女の間で、相手の心を強く引きつけるような巧みな言葉。 「私の手で愛するお前を殺してやろうか」 「いいえ、結構です」 としてはレッドの好意は嬉しいのだが、それで殺されたのではたまったものではない。そんな訳ではレッドが耳元で囁いてきた言葉をばさりと斬り捨てた。 「そう無下にするなよ、。人が折角考えた殺し文句を」 ソファに身を投げ出すレッドを見て、は半ば呆れたようにため息を吐く。 「リアルな殺し文句なんて嬉しくないですよ」 「そうか?」 「そうです!」 殺人予告をされて喜ぶ乙女が何処にいるというのだ。 「単純に愛してるだとかの方がよっぽどいいですよ」 「そんなのつまらないだろう」 「貴方が面白さを求めたら全部物騒な方向にいっちゃうじゃないですか」 「私としては芸術性すら感じるんだがな」 わからんなぁ、と呟いてからレッドは先程が入れた茶をぐいと飲み干す。そんな良い飲みっぷりを見て、は思わず微笑む。 「私達一般人にはね、貴方の芸術性は伝わりにくいんです」 「そうか、ならば」 と、レッドの手がの腕を引き寄せ、そしてその唇がの唇を柔らかく掠め取った。仄かに抹茶が香る中、何故だかそれら一連の動きはには酷く緩やかに感じられた。夢か、とも一瞬思う。しかし唇の感触は確かなものであって。 が長い睫を瞬かせてから改めて眼前を見ると、そこには楽しそうな笑みを浮かべたレッドの姿。途端、自身の頬が赤く染まるのがにもわかった。 「これなら伝わるか?」 そう言われてしまったら、はこくこくと頷くしかないのだった。 |