はもうすぐ死ぬだろう。 の身体からじわりじわりと流れ出てくるのは、レッドの最も愛する赤だった。 なんて美しい色だろう! レッドの胸は早鐘を打ち、狂わんばかりの喜びを感じていた。命の色。それこそこの世で最も美しい色だとレッドは思うのだ。レッドは命の尊さを常日頃感じていて、だからこそ命の美しさに酔いしれる。 けれど今、レッドの心中には訳のわからぬ悲しみも渦巻いていた。溢れんばかりの喜びを感じる一方で、恐怖すら感じる悲しみが存在するなんて。そこにレッドは戸惑いを覚える。 「何故だろうな」 レッドにはわからない。わかるのは、今にも消えてなくなってしまいそうながキスをせがんでいることくらいだ。お別れのキスをして、と。 レッドは横たわるの唇にキスをした。最後のキスだというのに、それは拍子抜けするくらいいつも通りのもので。嗚呼、けれどよく見ればの唇は震えていたし、鮮やかな紅色なんかではなかった。 早く殺してやらねば、と頭の中で声がする。 レッドはのろのろと立ち上がり、美しい赤を纏ったを見下ろす。そして刀に手をかけた。かけたまま、動かない。 「」 は何も言わない。代わりに、遠くで鳥の鳴く声が聞こえた。 逝ったか、と思う。 突然訪れた虚無感が、レッドの手を刀からゆっくりと離させた。 「私がお前の命を奪いたかったのになぁ」 自分の両手をじっと見つめる。この手が美しい色に染まっていないなんて。 ただ、悔しさだけが残った。 |