目を覚ましベッドから身を起こす。と、目に入ってきたのは丸くなって眠る少女。いつの間に潜り込んで来たのやら。 この娘はもう少し男を警戒すべきだ、とベルナールはため息を吐く。それとも男として認識されていないのだろうか。そう思い当たった所で、無意識のうちにベルナールの眉間には皺が刻み込まれた。彼自身はそれに気付かない。気付く前に名を呼ばれた。 「ベルナール」 間の抜けた頼りないの声。寝言だった。 眠っているからはもやもやとした思念がベルナールの頭へと流れ込んでくる。夢である所為か形は酷くおぼろげではっきりとはしなかったけれど、それはとても暖かくて優しくて。 「良い夢を見ているのか」 そう言ってから、どうも最近独り言が増えたな、とベルナールは苦笑する。の所為だ。相変わらず幸せそうに眠る、この娘の所為。 骨ばった手での柔らかな頬に触れると、はくすぐったそうに小さく身をよじった。が、起きる気配は無い。 それにしても相変わらず表情豊かな娘だ、とベルナールは思う。起きていようが寝ていようがそれだけは変わらないらしい。 「ベルナール」 もう一度がその名を口にした。それがあんまり幸せそうなものだから。 「名など呼ばずとも、私は此処にいる」 白い小さな手を骨ばった大きな手で包み込んでやると、眠っている癖には嬉しそうに笑った。 |