真夏の陽光

 ガキというのは遠慮を知らん。
 だからジェットの言うところまだまだガキであるは目をきらきらさせてこう言うのだ。
「ジェットさんの腕、かっこいいね」
 ガキというのは無神経である。
 だからはジェットの義腕である左腕に遠慮無く興味を示し、目をきらきらきらきらさせるのだ。そのきらきらは、今のジェットにとっては心地良い春の陽射しではなく、真夏にじりじりと照り付ける陽光のようなものでしかない。
「あぁそうかい」
 ジェットは面倒臭そうにそう言うと、読んでいた雑誌に目を戻した。右腕でページをめくる。その拍子に左腕がぎしりと音を立てたものだから、反射的にジェットの眉間には皺が刻み込まれた。と、
「ごめんなさい」
 突然の謝罪の言葉。見ると、先程まで目をきらきらさせていたが明らかに落ち込んでいた。
 これだから気分屋のガキは嫌なんだ、と思う前にジェットはのことが心配になる。こんなガキを心配する自分を多少情けなくも思うが、こればかりは性分だからどうしようもない。
「急にどうした」
「ジェットさんを嫌な気分にさせた」
 ガキというのはどうしてこう人の気持ちに敏感なのだろう、とジェットは思う。そう、面倒臭い程に。
「人を嫌な気分にさせたら、謝るのは当たり前でしょう」
 だから謝ったの、とは言った。落ち込んでいてもは言葉をはっきり喋る。ジェットはそれが嫌いではないから、むしろ好ましく思っているから声をかける。
「それさえわかってりゃ上出来だ」
 わしゃわしゃとの頭を撫でてやると、はくすぐったそうに笑った。つられて自分も笑っていたことに気付いたジェットは、すぐに顔をしかめた。それでもは嬉しそうに笑っている。
 きらきら、きらきら。
 真夏の陽光も悪くないと思った。

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