絶対主義者の夢

 壊すな。
 あたしの全てを壊すな。



 ざらきたいちょうがたおされました。

 は書類から目を反らさず、眉をひそめるだけだった。
 笑えもしない冗談だ。なんてくだらない。
 「あんまりふざけた事を言ってると、降格するよ」
 部下を冗談めかして嗜めてから、書類にぺたりと印を押した。今日は好調だ。くだらない冗談で気分を左右されてたまるか。
「しかし、」
 嗚呼、うるさいうるさいうるさい。
「何度も同じ事を言わせないで」
「倒されたんです!」
 部下の金切り声を打ち消すように、は筆を机に叩き付けた。だん、と言う音がしんと静まった部屋に響いた。部下を睨み上げると、青ざめて恐怖に歪んだ顔がそこにあった。
 あのね、もしかして、なんて言葉は欲しくないの。
 あはははは、とは笑った。

 こんな酷い報告なんて、くそらえだ。

 一気にの霊圧が増幅した。ざわり、と。その異常な霊圧に耐え切れなかった部下が、とうとう胃の中の物を吐き出した。それを見てもは笑い続けた。
「そんな事、ある訳無いでしょう」
 部下は何も言わない。言えない。
「誰にも壊させやしない」
 は不気味なまでに穏やかな笑みを浮かべた。



 だからわたしはしんじない。

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