ただ君を想うだけ

「どうしたら我慢強くなれるかって?」
 バナーが問い返すと、は力強く頷いた。
「何でまた、急にそんなこと」
「駄目なの、私。最近、どうも怒りっぽくて」
が?」
 意外な台詞だった。バナーはに会ってから、彼女が怒っている所を見た覚えがない。
「私も、貴方みたいに強くなりたい」
「僕自身は、強くなんてないよ」
「そんなことない」
 バナーが軽く笑って流そうとした言葉を、普段は温和なが力強く否定した。優しい娘だ、とバナーは思う。
「ありがとう」
 バナーが素直に感謝の念を述べると、は照れてしまったらしい。別に、と目を逸らしてそっけなく呟いたが、ごまかそうとしたそれは酷く不自然なものになっていた。彼女のそういう不器用さも、バナーは好ましく思っている。
「で、協力者に理由は聞かせてくれないのかい?」
 バナーが気をきかせて話題を戻してやると、は一瞬迷った後、重たい口を開いた。
「…実は」
 なんてことはない、他愛のない話。意中の人が他の女性と話していると苛々してしまうのだ、とは言った。
 ただ、それだけ。
 あまりに平和すぎる理由に、バナーは気が抜けてしまった。それにしてもあまりに間の抜けた顔をしたのだろう。彼の顔を見たは、早口で言い訳めいた言葉を並べ立てた。
「くだらない理由でしょう?自分でもどうしてそんなことでって思ってる。でも、どうしようもないの。こっちはこれでも本気なんだから」
「ごめんごめん」
 ただ、随分可愛らしい答えだったから、驚いたんだ。
 困ったような笑みを浮かべたバナーがそう弁明すると、は顔を真っ赤にして何も言えなくなってしまった。

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