道端に咲く花の愛おしさ

 何故、こんな娘がBF団の一員なのだろう。
 道端にしゃがみこんでいるを見下ろしながら、ヒィッツは首を捻る。
「何をしている」
「あ、ヒィッツ様!あの、これ、お花が踏まれていて…可哀想だなって」
「…貴様、此処を何処だと思っている?」
「え?」
「言ってみろ」
「えぇと…BF団の基地内の」
「そういう事ではない。破壊集団の一員が、花を気にしてどうする」
「あ…でも、ほら、破壊と創造は表と裏でしょう?対となるものに、人は興味を持つものではないでしょうか」
、貴様は本当に変わっているな」
「あ…!」
 突然、驚いたように声をあげるを、ヒィッツは訝しげに見た。驚きながらもどことなくが嬉しそうなものだから、なおさら理由に見当が付かない。
「どうした」
「あの、名前」
「名前?」
「はい!覚えていて下さってたんですね、私みたいな下っ端の名前」
「…おかしな奴だと思っていたからな」
 があまりに嬉しそうにするものだから、ヒィッツはなんとなく居心地が悪い。
「やっぱりヒィッツ様は、お優しい方だと思いますよ」
「何だと?」
 予想外の言葉を受けてヒィッツが思わず聞き返すと、は自信ありげに笑ってみせた。
「しゃがんでいる私に声をかけて下さいました」
「それで?」
「それだけです」
「は」
 呆気に取られるヒィッツを見て、はますます楽しそうに笑った。
「ヒィッツ様には理解できないことかもしれませんが、私にとってはすごく嬉しいことだったんです」
 嗚呼、随分おかしな娘に声をかけてしまった。そう思うのに、何故だかこの場から立ち去れない自分に気づいて、ヒィッツは頭痛を覚えた。

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